1 こたつと日葵

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「ここ行ってみたいんだよねー。三朝温泉。知ってる?」 「知らない」 「なんかね、お湯がとろとろで肌つるつるになるんだって」  前に一度テレビで見てから、行きたいと思っていた。梨も好きだし、砂丘にも行ってみたいし。 「つるつるになる温泉入ってー、豪華なごはん食べてー、お酒飲んでダラダラしてー……絶対最高だよね。あー、彼氏と行きたい。浴衣でカラコロしたい」 「カラコロ?」 「浴衣で温泉街歩くこと」 「ふーん。俺が一緒に行ってやろうか?」 「だから、彼氏と行きたいんだって」 「だから、俺と付き合うかって」  テレビから、またぶるるるると間の抜けた音がした。陽太は画面を見ていて、「お、俺もいいとこ行きそう」と呟く。  またそうやってすぐ軽々しく言う。  わたしが「うん」って言ったら、あの時みたいに困るくせに。  唇を噛む。  陽太はやっぱり顔色ひとつ変えていなくて、何も考えずに言っている、そうちゃんとわかっていたのに、胸がちくりとした。
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