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彼女が私に何を残したのか。
それが気になっていてもたってもいられず、家に帰ると喪服も脱がずに彼女からの封筒を開封する。
そこに入っていたのは、SDカードと一枚の手紙だった。
手紙に書かれていたことは、……
「悪友へ
あなたに、私の人生で最後であり、最大となるであろう研究を託します。
私にはもう時間が残されていないみたいだから、どうかこれを完成させて、世に発表してほしい。それまでは、病気に負けないで。
この研究を完成させることができれば、私たちの勝負は引き分けよ。できなければ、あなたの負け。これは私たちの最後の勝負なの、分かってるでしょ?
もしもこの研究を完成させる前に死んだら、あなたのことを負け犬だとあの世から笑ってやるわ。死ぬのなら、研究を完成させてから死んで」
もう書く力もほとんどなかったのか、その手紙の文字はとても読み辛いものだったけど、泣き言は一切書かれておらず、どこまでも勝ち気な彼女らしい手紙だった。
「病に冒されていても、最期まで彼女は彼女だったんだ……」
最期まで彼女であったことに安心しながらも、早速パソコンにSDカードをさし、ファイルを開く。
「これは……っ!」
そこに書かれていることを見た瞬間、思わず息をのむ。
きっと、これは世の中を揺るがすことになる。
ファイルの内容を見た私は、すぐにそう感じた。
最後の最後で、大変な研究を残してくれたものね……。
これは、なんとしてでも完成させないといけない。
病に冒され、ボロボロになった心と体に再び闘志が湧いてくるのを感じる。
彼女から託された研究を完成させるまでは、絶対に死ねない。
その日から、私の人生最後にして絶対に負けられない戦いが始まった。
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