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プロローグ
いつだったろうか。
自分の性を”売る”事に抵抗も葛藤もなくなって、これは夢実現の為の、正攻法なんだと決めたのは…。
私は、20歳から32歳の今まで、性風俗の仕事しか働いた経験がない。
単発で、デッサンモデルやコンパニオンの仕事はした事があるけれど、それらは安定して就職する事は出来ず、直ぐ辞めてしまった。
今年32歳、このまま仕事を続けていては、将来結婚をして家庭を持つなんて事は出来ないと転職活動を始めた。
フロアレディやフロントの面接をいくつか受けてみたけれど、学歴もキャリアもない私に世の中の風当たりは冷たい。
そんな時、目についたのはネットビジネスだった。
これなら実地経験を積めば、仕事を受ける事が出来るし、フリーランスという働き方も自分にとっては良い環境に思えた。
ただ、プログラミングやWEBデザインは習得するまでに、ある程度の時間と勉強が必要で、どんなに要領良く最短で習得したとしても収入が得られるまでには6カ月は掛かること。
スクールに通うとなれば授業料も60万円以上必要で、しかも80人の定員のところ半数は2週間で辞めてしまうらしいということだった。
自分に、その根性がある事は全く自信がなかったし、そんなに費用も時間もかけられない。
今すぐに実践しながら収益が出て、苦心しないで続けられる仕事がしたい。
なおかつ学歴もキャリアも、人の評価に関係なく出来る仕事がないものか…。
私が持つ技術や経験なんて…。
そう悩んでいた時、唯一売れる”私が持っているもの”が思いついた。
それは私のこの風俗経験の”エピソード”だ。
普通の人生なんて言葉が、どこにも当てはまらない、この10年の出来事を私小説にしてみたら、読者の人はどう思うのか。
不安よりもワクワクする気持ちでこの物語を書き始めた。
苦しい事も辛い事も、いつもポジティブに向き合って乗り越えてきた。
それらは、今となっては面白いオリジナルエピソードだ。
出会った全ての人は登場人物になり、私自身が主人公の物語。正解も全ては私が知っている。
“そうだ私小説を書こう。”
そう決めた春の初めだった。
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