蛮勇のクリエイター

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 高名な写真家がこの風景を撮影し忘れていったのか、という考えが頭をよぎったが、そんな写真家がポラロイドやモバイルタイプのフォトプリンタを使う とは考えにくい。つまり撮影後に現像したあと、わざわざここに持ってきたと考えるのが妥当だ。  では、何を思ってそんな事をしたのだろうか?にわかに産まれたその謎に私は高揚感を覚え、目の前の風景と手に持った写真と見比べる。すると写真と現実の間に違いがあることに気づいた。  それは写真の中にだけある立て看板。この写真の構図も被写体は風景ではなくこの看板だったようだ。この写真を撮った人物は一体何を思ってこんなものを撮影したのだろうかと、よくよく目を凝らしてみればそれは、写真の個展の案内板のようだ。 「蛮勇のクリエイター?」  サブタイトルのように銘打たれたその看板は、右手にあるビルの谷間の細い道を指し示していた。看板に記載されている開催時期を見ると今日もやっている。どうやらこの道の先で写真展が開かれているようだ。
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