蛮勇のクリエイター

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 看板を写真に残したくなるような写真展とはどんなものだろう、と今度はその看板の示す写真展に好奇心が湧き始めた。その誘惑に抗うことができない私は、拾った写真を手にしてビルの谷間に足を踏み入れた。きっとこの写真展にその答えがあると信じて。  その道をしばらく進んでいると、再び地面に写真が落ちていた。今度はアスファルトの上に置かれた矢印の写真。どうやら進む先を示してくれているようだ。  なるほど、どうやら落ちている写真も作品の一部のなのだな、と納得したところで私は、しまった、と気づいた。手にしたこの写真も案内板の一つだったのである。まあ後で戻せば良い、どうせ帰りに通るのだからと、私は写真を上着のポケットにしまい込み、いざなわれるままにビルの谷間を進んでいった。  次々と現れる矢印の写真を追いかけていくと、なにもない壁に向かって曲がるように指示された写真が現れた。なんだこれ、と思いつつビルの壁を見るとそこには写真が貼られていた。今度の写真は2L版のやや大きい。そしてそこに写っているのは、今貼られているビルの壁、そしてCLOSEと書かれたオープンプレートだった。  どういうことだろう、CLOSEという事は今日は休みなのだろうかと腕組みをしながら大きな写真を見ていると、ビル風に吹かれた写真の下部がはためいた。どうやらこの写真は上辺だけ壁についているようだ。  であれば、と私は写真を上方にめくりあげる。するとその裏からOPENと書かれたオープンプレートが現れると同時に、その横の壁が重いドアの様に開いた。この写真は隠し扉のスイッチだったようだ。  忍者屋敷のようなその仕掛けに、私は子供のようにはしゃぎたい気持ちを抑えつつ、現れた秘密の部屋へと足を踏み入れた。
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