もう一つの『蜘蛛の糸』ストーリー

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 そして登り口から少し行った所にある古いベンチに、ドクヤは座ると、大きく両腕を上に伸ばし、深呼吸し、 「しかし……これだけ人を殺してきたら、逮捕されれば死刑だろうし…… 死ねば、直で地獄行きだろうな……」  ふと見ると、足元を十匹ほどのアリが列を作って歩んでいた。  彼は、思わず足で踏み(つぶ)そうと思った。  が、ふと一考し、 「いやいや、昨日あれだけの生命(いのち)を奪ったんだ……。こいつら、こんなに小さくても生きてる……。気分も良いから助けてやろう……」  足を元の所に戻すと、立ち上がり、また歩きだした。  しかし山の中腹まで登った時、鳥が体に当たったためバランスを(くず)し、谷へ落下して死んでしまったのだ。
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