0人が本棚に入れています
本棚に追加
太陽の光で目が覚める。実際に目を開けたわけでは無い。日光が目蓋を突き破り僕の脳を刺激したのだ。目蓋を抜けた光はオレンジがかった色をする。毎朝見るこの色。私にはこの色が苦痛だ。私は光を遮るため顔を毛布で覆う。しかし泣きっ面に蜂とはこのことを言うのであろうが、毛布に顔を埋めた途端、携帯のアラームが鳴る。その時やっと目を開けた。アラームの音のせいか、習慣のせいか無意識に目を開けてアラームを止めるため毛布から顔を出して、手を伸ばす。するとまた先ほどの光が顔を覆った。とっさに目を閉じ、顔を毛布で隠す。部屋にはお金が大量に落ちる音が響いている。目を閉じたせいでとても騒々しい音に聞こえる。携帯の大体の位置は把握していたので、すぐに伸ばした手でそれを止めた。音がやんだ。冬であるせいか、外からは鳥の鳴き声すら聞こえない。隣人の物音さえ聞こえない。まるで無音室にいるかのようである。そこに自分だけの空間があるようである。私はこんな静かな場所ほど快適なところはないと思う。しかし快適とはいえ毎日同じ朝だ(夏だと虫や鳥の声がするが)。こんなにも快適な空間が大量生産されると、逆にどうしても快適だと感じられないとも思う。この無音室のような空間は私にとって快適でもなければ、快適で無いわけでもない。つまり快適なら良いのであるが、この空間を快適にする方法も無いのだ。このなんとも表現しがたいこの気持ち。こんな気分になるのも日々の日課であるので苦痛では無い。しかし私にとって、やはりあの光は苦痛であった。
目が覚めたことだし、布団から出る。カーテンは開けない。そのせいで部屋は薄暗い。私は電気をつけた。部屋が急に真っ白になる。寝起きだから余計にそう感じる。とてもまぶしい。急な明るさのせいか、頭が痛い。少し立ちくらみがし、机に手を置く。だんだんと目がこの明るさに慣れてきた。落ち着いたので、布団をたたむ。
最初のコメントを投稿しよう!