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プロローグ
何一つ光の一筋さえ無い空間に白色の光が差す。
差し込む光はすぐに暗闇へと飲み込まれて白と黒、それらの光が混ざり合い灰色のものとなる。
しかし、それでいて、どこか温かみのある摩訶不思議な空間だった。
(確か僕は、研究室からの帰りに車に轢かれて……! そうだった! 僕は──!!)
「お目覚めになられましたか?」
「僕は死んだの? それともここは病室……?」
「そうですね……。ここは貴方の元いた世界では“神界”と呼ばれる場所ですね……」
「んん? 神界……? 物語じゃないんだからそんな出鱈目話、あり得る訳がな──」
「それが本当の事だとしたら?」
「?」
「私の名前は女神ネオンと言います。私の目的ですが、単刀直入に言うと貴方は異世界へ転生してもらうことの出来る貴重な魂の一つなので、ケミカル・ファンタジアと呼ばれる世界へ転生してもらいたいと思っています。なるべく早く決めてもらえると助かりますね……! 勿論!! ギフトとして望み通りのものを与えましょう!!」
彼は自分の意識がこの神界と呼ばれる場所にあるのならば、遺体はどうなったのかと疑問に思ってネオンに尋ねた。
「因みに僕が死んだ後、死体はどうなったの?」
「……死体はすぐに葬式に出されて焼却されましたよ?」
「ねえ、出来るなら焼却っていう言い方はやめてくれないかな? 日本人としての感性が何かを訴えてくるから……」
「あら? そうなんですね。それでは焼却処分、と」
「そうじゃない! 逆なんだよっ!!」
「まあ、話を進めますと、貴方の魂は魂を覆うアストラル体が非常に強固なんですよ。そのような魂でないと転生する際に極度の負荷がかかってしまい転生を終えた頃には“空っぽ”です! ……だから貴方のようなよっぽど頑丈に魂を覆っていないと転生に耐えられないのです」
そう言ってネオンは転生のための必要不可欠な要素について一方的な説明をし終えると、「さて……」と付け加えてから本題の話を切り出し始めた。
「ここまでの話を聞いて転生する気になりましたか?」
「偉そうなこと言って悪いけど、まだ不十分かな……? というよりも目的がはっきりとしていない以上、転生する気になれないんだよね……。 何より不安だらけだ!」
「転生して、邪法である【反転魔法】を使う“堕天鬼族”を倒して来て欲しいのです」
「魔法なんて存在するの? その世界には!?」
「ええ、勿論。他に言うのであれば……今はたくさんの種族がそれぞれの平和を謳歌していますよ? どうです? 転生したくなってきたでしょう!?」
「ネオン……様は何処の通販番組だよっ!?」
「それはジャポネットというお店でしたっけ?」
「惜しい! すごく惜しいよ!!」
「あら? 違ってるんですか? まあ、いいです。あら? すみません、話が脱線してしまいましたね。それで、転生しますか?」
「分かったよ……! 僕は転生することにします! それで──」
「ギフトの件ですよね?」
「そうです……、ギフトにしたいもの、したいもの、したいもの──」
「あら? 思いつきませんか? とびきり強い聖剣やチートな能力、何でもアリなんですよ?」
少し迷いを見せて彼が選んだ答えはその意外性から女神であるネオンすらも驚かせるものだった。
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