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白い世界、僕らの色
今日は朝から雪がパラついていた。
見上げるとダークグレーの曇天が粉雪を散らせて、僕の心を圧迫する。
僕は俯き、目を閉じた。僕の視界に闇を与えて、鬱屈な気分を追い払うと試みる。試みたけど、人の心はそんな単純には出来ていないみたいだ。鬱屈な気分はやがて、寂しさへと変わって、僕の心を這いずり回る。
「はぁ……」思わずため息が漏れた。
そうして、埋もれそうな何かを探すように一歩を踏み出す。
白く染まりかけたこの街を僕は行く。一歩一歩踏みしめる度にキュッキュッと雪が軋む。
雪はますます強くなり、僕の視界を遮った。やがて、ダウンジャケットの温もりは冷め、体がぶるぶると震えそうだ。僕は足早に家路を急いだ。
僕はすべてを天候のせいにして、早足で歩いていた。今にも蘇りそうだったから。
この街が白一色に染まる前に――――
染まったら、僕はきっと、思い出す……
君という記憶、君という残像、君というぬくもりを……
でも、拒めば拒むほど、懐かしい君は僕の心を乗っ取っていく。
今頃、どこで何をしているのだろう。元気にしているか。あの歌はまだ聞いているかい。きっと、いい人出来たんだろうな。幸せでいるかい。
君にかけたい言葉が次々に雪崩を打つ。そうやって、さらに僕を惨めにさせる。
僕はただ、家路を急いだ。これ以上は辛いから……
雪降る世界、白銀の街。
もう戻れないあの頃を――――
振り払うように僕はただただ歩を進める。
戻れっこない過去を置き去りにして……
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