4・根拠と証拠

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「オハヨウゴザイマス」  思わずカタコトになってしまったが許してほしい。  ドアを開けるとリュウくんが立っていた。その背には大きなリュック、手にはボストンバッグを提げている。家でも追い出されたのか? といった風貌だ。すでに妙な威圧感がある。  リュウくんは部屋に上がると、ローテーブルの上にそのリュックとボストンバッグをドカリと置いた。録画中のカメラをベッドからテーブルに向けるのも忘れない。 「とりあえず、もう片っ端から試していこうと思う。でもその前に、この部屋に霊が来やすいように補助アイテムを用意してみたよ」  そう言いながら、リュウくんはガサゴソとバッグの中を漁る。そして取り出してきたのは、50cmほどのクマのぬいぐるみだった。 「事務所の小道具倉庫にあったんだけどね。知らない? これ夜泣いたり動いたりするって噂があるんだよ。他にも、コントで使ってる最中にクマがまばたきしたって目撃情報もある」 「……」  一瞬でも、癒されるしこれ置くなら大歓迎、と思った自分を叱りたい。 「次に、これ」  リュウくんが次のアイテムを取り出してくる。それはオレも知ってるものだった。ワラ人形である。 「これはAma〇onで買った」  あるのか、Amaz〇nに。ワラ人形が。  リュウくんは、ちゃんと五寸釘もセットだったよ、と言って隣に並べた。セット売りなのか。 「あとこれ。ボクの家の近くにある骨とう品店の旦那さんにもらった」  次に出てきたのは、年季の入ったブリキのおもちゃだ。これは30cmくらいの大きさで、昭和に一世を風靡したロボットアニメのキャラクターのものだった。 「何かいわくつきのものがあったら貸してくれって頼んだら、くれた」 「リュウくん、ど、どんないわくがあるの……」  聞きたくない。聞きたくないけど、聞かずにはいられない。 「それ、足の……そのブーツのところ、取れるんだ」  リュウくんがロボットの足元を指さす。 「ここ……?」  オレは何も考えずにロボットの赤いブーツを引っこ抜いた。すると、それは思ったよりも簡単に外れた。 「!!」 そして、その中からでろりと何かが出てくる。それは…… 「か、髪の毛!?」  そう、髪の毛である。しかも、なんだかぐるぐると雑に、しかし何か意味のあるような、妙な束ね方がされていた。 「すごいでしょ。骨とう品店の旦那さんも、売り物に出すわけにいかないし、かといってそのまま廃棄処分するのも怖いからってずっと保管してたんだって」 「ガチのやつじゃん!」  これ、今日だけだよね!? 終わったら、リュウくん持って帰ってくれるよね!?  プルプルしながら髪の毛を元の場所に戻し、ロボットもテーブルに置いた。テーブルの上が禍々しくなっていく。 「あとは賑やかしに、同じ骨とう品店でたたき売りされてた市松人形とこけし、それと心霊DVDたくさん借りてきた。これずっと流してよう」 「オレ今日呪い殺されるんじゃない? 大丈夫?」 「骨は拾ってあげるよ」  リュウくんはこともなげに言うと、部屋の各所にそれらをばら撒いた。一番やばそうな赤いブーツのロボットはテーブルの上だ。 「じゃあ、早速……幽霊視えるまで帰れナイン始めたいと思います!」 「わー、がんばるぞー」  張り切るリュウくんと、すでに精神を消耗し渇いた笑いしか出ないオレ。 つい二週間ほど前は逆だったのに……と、これから更に精神をすり減らすであろう実験に、少し遠し目をしたのだった。
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