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「――で、この度正式に縁談が来たって?」
「…そやねん…。小学生(ギリ十代)のトチ狂った妄言が嘘から出た実展開で現実に…」
「しかも――」
「清護さんが婿入りする言うてんねん。挙句――相手ワシやで?!」
「……まぁ…その一文だけを切り取れば、アンタが逆プロポーズした構図だしねぇ」
初対面――おかーちゃんに紹介される形で清護さんと顔を合わせて開口一番、私が放ったセリフは――「初めまして!」からの「結婚してください!」
我ながら、大概に気が狂っていると思う。
いや、気は狂っていた――てか気が動転しMAXで変な意味で荒ぶっていた。
だからきっと勇猛果敢な堵火那の血がマッハで湧いたんでしょうな――なんぞよーわからん方向に!
「……というか最初の時点でなんで訂正しなかったのよ」
「え、そりゃおかーちゃんに再婚なんてして欲しくなかった――し、
生まれて初めて生で見る異次元のイケメンにふつーにときめいてた――
――てか、一世一代の勇気を使い切った後だぜ?!後の記憶なんてあるワケないジャン!?」
「…じゃあなに?今の今まで弁解もしなかったわけ?」
「……いや、冷静に考えて?ギリ十代の開幕プロポーズを真に受ける大人なんているワケないじゃん?
んないるワケないモノをいると思って弁解するって自意識過剰じゃん?
我が家、今でこそおかーちゃんパワーでそこそこ名が売れておりますが、基本的には一般ピーポーだからね?
してワシに関してはちょっくら格闘技に適性があるってだけだし?」
「…アンタの適性がちょっくらじゃない――…のは置いといて、要は相手側が真に受けてないだろうと放っておいた、と」
「そう――当然、だべ?」
「……まぁ、当然ではあるわね…。発端が当然とは程遠いけど…」
疲れ切った様子で苦い笑いを浮かべる――のは、我が親友たる長永梨亜嬢。
母親同士の交友の延長上に成った関係――ではあるけれど、今ではそれから独立した友情で成立している。
…その辺についてはデリケートだから置いといて――
「…今までにもさ、清護さんとはおかーちゃんもワシも顔合わせてるんだけど――さ?
めっちゃふつー――…今更思えば仕事相手+その家族に対して、にしてはフレンドリーではあったけど…そもそも清護さん人間出来すぎマンじゃん?
だからこれが清護さんの通常運行なんだろうと思っていたわけで……」
「……まぁ、あの男は手の内見せないで有名だし…。
…それでもアンタなら見抜けるんじゃないの?」
親友が、さも当然といった風で「見抜けるんじゃ」と首をかしげる。
それは、私の能力を買ってくれている証拠なだけに、親友としてとても嬉しいのだけれど――そんな当たり前みたいに「勘」に信頼寄せるのもどうかと思うよ?!
なんかまぁ小さい頃から悪意とか害意とかに敏感ってか過敏な方だけどさ?
これ、あくまで勘だからね?外れりゃただの被害妄想ですよ!!
「親友よ、まぁ仮にワシの危機感知?的能力が正確なものとしよう。
ものとして――もだね?引っ掛からなければ有るも無いも同じなわけで??」
「…………じゃあ純粋にマジな――」
「ありえるかー!!ありえるわけないやろ!ワイやで?!
見てくれはおろか、能力すら是非を問うならば非!のワイやで?!
更にもっかい言うとお家は一般ピーポーですよ!?
是無し、能無し、肩無しのナイナイ☆ナイトフィーバーな堵火那さんを!
パーフェクトイケメン御曹司な清護さんがめ、娶っ……いや!一般ピーポー宅に婿入りするワケとは何ぞや?!」
「……だから――」
「ぇえいっ!分からぬ女ぞ!なんか当たり前に同じ空気吸ってけっどな!我らは月とスッポン――通り越した月とカトンボぞ!
…貴様のような愛されボデーでもなければ美人でもなく――こちとら家庭的ですらないんだぞぉ~~…!!
もーお前と清護さんがくっつけよぉ~~~お似合いじゃね~かぁ~~金銀美男美女カップ――げぶっ」
「うっさい。あと、迷惑物件を人に押し付け――」
「あ゛~~ん~?!迷惑物件だァ~?超絶優良物件でしょうが!
イケメン!頭脳明晰!スポーツ万能!人格者で経営者としての手腕も確か!
ホレ!今の長永さん家に必要な人材では?!」
「………ほう。我が社には彼が必要――だと」
「…あ、すまね。勢い余ってアホ言った。メンゴメンゴ。
――つーことで頼むぜ親友。やんわりでもズッパリでもいいからワシはやめとけって清護さん説得してき――ぇんぐ」
ごろにゃーんと、慣れない猫撫で声でお願いした――のが悪かったようで、「キモい」の一言と共に顔面を親友に鷲掴まれた。
金髪碧眼の美少女――な親友ではあるが、白の総レースワンピが似合うようなお嬢様ではない。
寧ろそれとは真逆に等しいタイトな黒スーツが似合っちゃうタイプ――なだけに腕っぷしはなかなかで。
こう、本気でぐわしぃい…!と顔を握られるとね、頑丈で割と有名な堵火那さんでも痛いのよ?!
顔面の限界を感じてべちべちと梨亜の腕をタップする――と、梨亜はふっかーいため息を吐きながら手から力を抜く。
ただ力は抜いてくれたけれど、顔から手は放してくれない。
…要するに以降のやり取りを真面目にやらないと顔面粉砕の危機アゲインってことですな!
「……藤霞と長永…接点ないってことは……ない、よね?」
「なくはない――…けどね、立ち位置が厄介なのよ…」
「…ほお?」
「……当主の孫と分家の孫――って言ったらわかる?」
「ほお……なる…ほど……?
………めっちゃ手合わせしてはいるけど仲悪くはないんだよなぁ……」
「……チッ、脳筋一族め」
「あー!全国の堵火那一門を敵に回す発言ー!でもまぁ否定できないから黙っとくね☆
――で、なに?どゆこと??」
「……、………はぁ~……」
おい、なんね。おつむの出来は貴女様に遥か及ばないと自覚しておりますけれど、だからってとんでもないアホでも見たみたいなため息!
知識は偏っておりますし?記憶力なんてチキンですけれど――も!
理解力はそれなりを自負しておりますぞ!てかだから梨亜と親友になれたんやで…!
だからちゃんと説明プリーズ!マイエターナルベストフ――
「筆頭争いで敵対関係」
「ウワー!身も蓋もない解説キター!!」
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