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むかしむかしある所に、一人の女の子がおりました。
その女の子はとても引っ込み思案で、親戚の子供たちが楽しそうに遊んでいてもその輪に入ることなく、一人本を読んでいるような子でした。
…だけれど、彼女も最初から引っ込み思案だったわけではないのです。
いつも親戚の子供たちが一堂に会すのは、彼女のお祖父さん――の兄が経営する格闘道場。
そして従兄弟も又従兄弟もその他以下略も男の子ばかり。
そんな男の子ばかりの中で異物だった彼女は「女だから」と遠ざけられて――
――待て。虚偽を含むな。虚偽を。
彼女は道場の中においてどうにもこうにも異物でした。
親戚の子供たちはもちろん、道場に入門した子供たちもみんな真面目に練習に打ち込む中、彼女はふわっと撫でるような風で練習をこなしていたのです。
その姿はある者からは「不真面目」に、またある者には「嫌々やらされている」ように、そしてまたある者には――
――なんで練習嫌いであんなに強いのか。
……まぁ、人の見解はそれぞれだけれど、その上で子供たちが出した結論は「排除」。
少女自身が幼ければ、周りの子供たちもまた幼く、彼らの異物に対する「拒絶」は残酷なほどにストレートで。
そしてそれを真っ直ぐにしか受け取ることができなかった少女は、自ら人の輪から距離を置くようになったのでした…。
――…だから、虚偽を含むんじゃないわよ。
――試合となれば一緒になってワーワー騒いでたじゃない。
試合となれば話は別――なのです。
特に団体戦ともなれば、普段はおっそろしい兄弟子も、間違いなく勝利をもぎ取ってくれる一門の主力!
――ってなコトで腫れ者扱い的なことになってても試合の日だけはスターになれるモンなのサ。
――…それ、応援される側だった時の話でしょ。
――アンタの場合はどっちも騒ぎっぱなしだったわよ。
…そこはそれ、そーゆー時くらいは自分の気持ちを圧して輪に馴染もうとがんば――
――この問題、頑張るとすれば異物を受け入れなきゃならない周りが、でしょうに。
……。
――いい加減普通に話せ。
えー……普通に語ったらネタうっすいぜー?
――……結末が強烈な時点でうっすーくはないわよ。
そうかぁー?じゃあ普通に語るけど――面白くなかったら梨亜の責任なー。
「…帰るわ」
「待って!マジ待って!!
変なノリで話し始めないとワシの精神が死ぬという意味で語り切れないくらい語る側の精神疲労がヘビーな話で問題だからマジ聞いてぇ~!!」
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