神様のイタズラ

2/7
前へ
/7ページ
次へ
 その時、四人目に座っていた若い男性が手を上げて、起立し、 「破壊しなくても、隕石の軌道を変えるだけでいいのではないですか?」  すると周りからも、それに賛同する声が複数、上がった。  しかし中村は、表情を変えず、 「それは両者が止まっている場合のことで、隕石も地球も動いているのです。 動いている地球から飛んで来る隕石の軌道を上手く変えるのは、案外と難しいのです。 お分かりいただけますでしょうか? それに、そのための角度計算を再度している余裕は、もはや無いのですよ。 宜しいでしょうか?」  その男性は、納得したように席に戻った。  中村は、やはり表情を変えず、言葉をつづけ、 「しかし、貴重な発言――どうもありがとう御座いました。 話を戻しますが、さっき私が言った、いつ、どうすれば、この隕石を破壊できるか……? それも実は、推定ですが出ているようです。 しかし、それをこの会議で公表する訳にはいきません。 と言うより、私も知りません。 何故かと言いますと、この議場にスパイがいる可能性があるからで、妨害される可能性があるからです。 したがいまして、この特別会議は、ここまでです。 後の対策に関する詳細は、専門家会議で決められ、実行される予定です。 したがいまして皆さんは、今から半年後も生きているよう祈るだけです。 どうか悪しからず、ご理解の上ご了承ください。 皆さん、本日はご苦労様でした」  こうして緊急特別会議は散会となった。  召集された長官たちは、不満そうに退席していった。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加