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その時、四人目に座っていた若い男性が手を上げて、起立し、
「破壊しなくても、隕石の軌道を変えるだけでいいのではないですか?」
すると周りからも、それに賛同する声が複数、上がった。
しかし中村は、表情を変えず、
「それは両者が止まっている場合のことで、隕石も地球も動いているのです。
動いている地球から飛んで来る隕石の軌道を上手く変えるのは、案外と難しいのです。
お分かりいただけますでしょうか?
それに、そのための角度計算を再度している余裕は、もはや無いのですよ。
宜しいでしょうか?」
その男性は、納得したように席に戻った。
中村は、やはり表情を変えず、言葉をつづけ、
「しかし、貴重な発言――どうもありがとう御座いました。
話を戻しますが、さっき私が言った、いつ、どうすれば、この隕石を破壊できるか……?
それも実は、推定ですが出ているようです。
しかし、それをこの会議で公表する訳にはいきません。
と言うより、私も知りません。
何故かと言いますと、この議場にスパイがいる可能性があるからで、妨害される可能性があるからです。
したがいまして、この特別会議は、ここまでです。
後の対策に関する詳細は、専門家会議で決められ、実行される予定です。
したがいまして皆さんは、今から半年後も生きているよう祈るだけです。
どうか悪しからず、ご理解の上ご了承ください。
皆さん、本日はご苦労様でした」
こうして緊急特別会議は散会となった。
召集された長官たちは、不満そうに退席していった。
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