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ある時、それは、地球に向かって飛来していた。
春のある夜……
東京にある科学庁別館の会議室で、特別集会が行われていた。
緊急に召集された、各分野の代表である十数名の長官が緊張した表情で、議長の発言を待っていた。
とは言っても、参加者それぞれの頭には、ある程度の推測はあった。
何故なら、世界レベルの情報システム等により、今回の事態は今世紀最大のニュースとして伝えられていたからだ。
さらに、この会議の模様は、ネットの特別システムによって同時発信され、中国、ロシア、アメリカ等の宇宙開発センターで受信していた。
やがて、上座にいた科学庁長官の中村研二が立つと、会場の照明は落とされ暗くなった。
すると、前もって設置されていた巨大スクリーンに、ある映像が投影された。
それは実に脅威的な、超巨大隕石の姿だった。
中村長官は、テーブル上のワイヤレスマイクを取ると、
「諸君、これが、今回の問題とされるN703隕石です。
ところで、今回の特別会議が何故、日本で行われることになったか――と言いますと、この隕石の発見者が、我が国の天文マニアのN氏だったからです。
それでは本題に戻りましょう……。
ここに映っている画像は、いま現在のN703隕石の状況です。
この隕石の大きさは、推定ではありますが、約8550キロメートルです。
地球の大きさが、約12740キロメートルですから……その脅威はお分かりでしょう。
さらに困った事は、この隕石が地球に真っ直ぐ迫りつつある――ということ。
そして、これも推定ですが、この隕石が地球に到達するのは、今から半年後という事態なのです。
したがって、ここで考えなければならないのは、この隕石から、いかに地球を救うかという事です。
方法は色々あるでしょうが、私の考えはこの隕石を消滅させる事。
それに適しているのは、今のところ核爆弾が最適だと思われます。
ですが問題は、地球に影響なく、この隕石を消滅させるには、どのあたりで爆破すればよいか?
そして、それを実行するには、どうすれば良いか?――です……」
彼は、スクリーンに映っているN703隕石に、視線をやった。
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