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春季大会決勝戦!
俺達夫婦の家のリビングに
並べてある金色のメダル
人生で唯一のアベック優勝した
その時の証
あとにも先にもこれだけ…
世の中の情勢が変わり
mother工場の勤務体制が
世の中のような4勤2休制に
徐々に変わっていった…
俺と結婚する前の響はこの家に近い
本社系列の部署にチャレンジして異動した
この時はまだまだ平和な時
また3交代の土日祝休みに戻ればなんて
常日頃思う俺がいる
家を守る響や二人の子供達
思うと今の体制がいかに、社員と
その家庭を考えてないか?
そう思う....
響の同期の城島の様に本社に
異動希望なんか出せないあくまでも
俺は技術者として全うしたいから
✩ ⋆ ✩ ⋆ ✩ ⋆ ✩ ⋆ ✩ ⋆ ✩ ⋆ ✩
…慶司・side…
試合開始まで十五分
青い空に白い煙…
それを見ながら俺は考える…
俺は乾さんに言われた一言から
強い緊張感とプレッシャーと戦っている
試合会場となっているとある企業の
巨大な体育館の裏
俺は人が通らないそんな所で
壁に寄りかかっていた…
....本気で言っているのか?
あの人は....恋愛抜きで....響を....
バカヤロー!響は賞品でも何でもないわっ!
凄く腹が立って仕方がない…
六期上の先輩であり、剣道部主将の
『乾 祐也』
この決勝を落としたら…俺の恋人と
一晩過ごす…と言ってきた
確かに…1度はそんな関係になった過去が
二人にはある…
忘れもしない…俺と再び交際始めた直後…
昨年の秋の事だ
響《彼女》は、罪を感じ何も言わずに
俺との二度目の別れを選ぼうとしたけど
俺は手を離さなかった…
あの時に、あの人は味をしめてるんだろう
だったら…てめぇが決勝戦まで
勝ち上がって…俺から勝ちとりゃいいじゃねぇか…
ギリギリと奥歯を噛み締める
三年前…乾さんは試合中にアキレス腱断裂
年齢もあるけど、それから個人戦から退き
団体戦専門になっている
年齢が引っかかってるから…小泉を…
ギリギリ噛み締める奥歯
キィィンとこめかみが痛い…
だけど…
この勝負ッ!勝ってやるっ!
のどを鳴らしてお茶を飲み潰す
徹底的に暴れてやる!
俺は意を決して、体育館へ戻る
その途中…
体育館の入口で
俺は、俺を探す響の姿を見つけ
駆け寄ってその身体を抱きしめた
俺の大切な人…
俺をここまで戻してくれた人
渡さない…!
「響ッ!!本気でアベック優勝狙うぞ!」
そう言う俺に響は大きな目を
ぱちくりする....
そして…
「お…おうっ!」
いつものように笑んでくれた
『個人戦決勝の選手は…
第一、第二試合場へ集合して下さい』
アナウンスがはいる
「響、楽にいこうぜっ!」
「う…うん」
拳を合わせてそれぞれの
会場に別れる
「小泉....負けねえからなァ!」
「緊張して飯食わねぇ奴が
何言ってんだよ」
「あとでガッツリ食うんだよ」
バカ言いながら小泉と防具と竹刀を
持って向かう
....万が一…落としたら....
その時はその時だ!
そもそも俺達はガキじゃないし…
あの人だって、本気ではない....そう思う
これから戦う小泉は同期で友人
弱気になる俺のために....きっと
このように馬鹿げたこと言ったのだ…
用意を終えて俺と小泉は
試合場へ入る
隣の第二には用意を終えて
やはり相手と立つ響の後ろ姿
赤いタスキが揺れている
大会エンブレムと先生方に
四人一斉に礼をしてから
それぞれに礼をして帯刀
蹲踞、中段に構える
「おっ!山口の相手上段だぞっ!」
がやがやと聞こえる
まっ、そこは平気だな
俺は俺だけの試合に集中する
響は心配する必要が無い
「はじめッ!!」
五分間の戦いが始まった
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