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『──辻村く~ん。今晩泊めて欲しいんだけど』
本日12月24日。
辻村慈人はイヴの夜を独り淋しく自宅で過ごしていた。
夕食を終え、のんびりテレビを見ていると不意にスマホが鳴ったのだった。
慈人が何気なく出ると、情け無い声で大学の友人である坂下烓吾が泣き付いてきた。
「イヤだ。鳥羽か佐藤んとこ行けよ」
坂下がそんな事を言う時は大抵色恋沙汰が絡んでいる。
独りで居るとはいえ、こんな日に振られたヤケ酒に付き合わされるのはまっぴらごめんだ。
『鳥羽くんちは遠いし、佐藤は説教するから会いたくないんだよ!』
「そんなんお前の自業自得だろー?」
『そんな事言わないで早く開けてよぉ〜』
「は?」
『今、辻村くんちの前なんだよ』
「恐怖電話みてぇなことすんなよ」
はぁ、と溜息を吐いて慈人が仕方なく玄関を開けると、コンビニ袋を下げた坂下が「辻村く~ん」と猫なで声で抱きついて来た。
坂下は既に飲んでいるようでかなり酒臭い。
再び溜息を吐いた慈人は、坂下を引き剥がしながら渋々部屋に招き入れた。
「何か飲むか?」
「自分で買ってきたからいいよ。辻村くんも飲むでしょ?」
そう言って、コンビニ袋の中身をテーブルに並べ始める。
ビールとチューハイが4本ずつ。
ワインも2本出て来た。
その数に、慈人はがっくりと肩を落とした。
坂下は本気でヤケ酒を決め込むらしい。
慈人は酒に弱い訳では無いが、これから泣き言を聞かされると思うと憂鬱になる。
とは言え、折角自分を頼って来てくれた友人を無下に扱う事は出来ない。
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