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「夕食の残りもんだけど、食うか?」
慈人が酒のつまみになりそうなものをテーブルに並べて行くと、坂下は「ありがとう」と笑みを見せた。
「辻村くんて自炊してるんだ!? 俺料理とか絶対無理! 手料理出してくれるとかポイント高いし、辻村くんが女の子だったら絶対惚れてるって〜」
酔って普段よりも軽い口調になっている坂下の褒め言葉に、慈人は苦笑いだ。
坂下がソファを背凭れにテーブルについたので、慈人はソファに座って坂下の隣に足を下ろした。
坂下の後頭部を何となく見詰めながら、軽い口調で話し掛ける。
「──またフられたのか?」
缶ビールを手に取った坂下は、プルトップを開けて、ぐい、と一口煽る。
「まぁ、そんなとこだよね。付き合って2週間だしさぁ。しかもイヴに振られるって何なんだろ。たったの14日かそこらで何が分かるん。俺だって相手のこと何もわかんない内に終わっちゃった」
「何も、って友達とかだったんじゃねーの?」
「合コンで知り合ったんだよ」
「お前、それ何度目だよ」
坂下がもう何度女性に振られているのか慈人は数えてなんていないが、前に泣きつかれた時もその前も、合コンで……と言っていたような気がする。
溜め息を吐いて項垂れる坂下の背中を慈人が蹴った時。
テーブルに置いたままだった慈人のスマホが鳴った。
坂下からそれを受け取って確認すると、実家で暮らす姉からのメールだった。
急ぎの内容では無いが、直ぐに返事を送ってスマホの画面を消す。
すると程なくして返事が返ってきて、慈人はまたスマホを覗き込んだ。
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