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「じゃあ、代わりに聞こうか。この人は、どこが悪いんだ?」 「最初は、お腹が痛いと仰いました。それから、喉にでき物のようなものができて、そうなってからは喋ることも満足にできなくなりました」 「ふうん。ちょっと、失礼するよ」  掛け布団を捲る。涼十郎の目に、拒絶の光はなかった。  着物の前をはだけさせる。中年の男のものとは思えないくらい肉は薄くなり、骨の輪郭がはっきりと浮き出ている。それなのに、胃のあたりが異様に膨れていた。腹を触っていく。時折、涼十郎の顔が歪んだ。それから、首。喉仏の上のあたりに、もう一つ隆起した箇所がある。血色の悪い肌の奥に、別の生き物が蠢いているように見える。 「こいつは……」  早雲が言葉を呑んだ。美津が心配そうに、そして涼十郎が不気味なほど真っ直ぐに、見つめてくる。 「水は、飲めるのか?」 「少しずつ、口の中に垂らすようにでしたら。飲み込む、ということも、苦しいそうで」 「そうか。じゃあ、お湯を沸かしてくれ。俺がこれから調合する薬をそれに溶かして、飲ませるんだ。どんなに時間がかかってもいい」  美津は深く頷いて、部屋を出て行った。早雲は薬箱を引っかき回すようにして、いくつもの紙の包みを並べ、それらの中身を一つにまとめた。包みによっては全てを使わず、ほんの少量のみを出すものもあった。配分というものがある。  美津がお湯を持って戻ってくると、調合した薬を渡し、腰を上げた。 「俺は、いつまでもここにいられるわけじゃない。だから今後のことについて、宗右衛門さんたちと相談させてもらうよ」  視線で、宗右衛門たちを促し、二間隣の部屋に移った。
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