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 涼十郎は美津に薬を飲ませてもらってる最中で、部屋に入ってきた早雲を見て、美津は匙を持つ手を止めた。 「構わない。続けてくれ」  頷き、また薬を溶かしたぬるま湯を、少しずつ匙で掬って、涼十郎の口に運ぶ。食事も似たような感じで、ひどく時間がかかる。遅めの朝食と、その後の薬。それだけで、すでに昼前になっている。長い時間をかけて、ゆっくりと命に何かを与える。その何かが命を長らえるのか、それとも縮めてしまうのか。それは、早雲にさえも断言できないことである。  横目で二人の様子を見つつ、薬を調合していく。どの材料や薬を増やすか、それとも減らすか。また、新たに何を加えるか。今夜与える薬ができあがった頃、ようやく涼十郎は薬を飲み終えた。起こしていた上体を美津に支えられながら横たえ、目を閉じる。肉のそげ落ちた頬は濃い影を作る。それで目を閉じると、まさに死人のようになってしまう。  薬湯の入っていた器を持って、美津が部屋を出て行った。これから、掃除や洗濯など、家事に走り回るのだ。その間、早雲と宗右衛門が交代で、もしくは一緒に涼十郎の様子を見守る。  涼十郎の様子や薬の効果、そして新たに作った薬について書き留めるため、帳面を開き墨をすった。あらかた書き終えると、涼十郎が目を開き、早雲を見つめていることに気づいた。
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