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3回
麻衣は、近くにあった少しぬるくなったビールを一気に飲んだ。そして目の前の物を食べ始めた。
「えっ、何、麻衣、どうしたの?」
ゆりの声が聞こえた。
「いや、別に」
麻衣は、食べ続けた。
麻衣は叫びたかったのだ。
サンカイ?さんかい?3回?
私が1度も体験したことのない、体験したいと切に願っていることを、小春は3回だよ!
みんなは1回体験してるからいいけど、私は一回も体験してない。
小春はかわいそうでも何でもない。3回だよ。3回も一生を共にしようって誓った相手がいるんだよ。すごいよ、それだけ小春に魅力があるってことじゃん。
麻衣は小春が羨ましかった。
かわいい子供も3人もいるんだよ。子供のために頑張れるし、全然幸せだよ。
私は1人だよ。予定なしだよ。0回、1人。
あぁー、もぉー、私は心の中で叫び続けた。
みんな、分かってないなー、0回の気持ち。
0回は3回を笑ったりできないんだ!むしろ!リスペクトだよ!
同じく0回のゆりをみた。ゆりは変わらず、話を続けていた。
ゆりは0回でも状況が違ってた。もともと大学を卒業後、弁護士の卵と付き合っていたのだ。彼は司法試験にチャレンジするも、なかなか合格できず、合格して生活の基盤が整ったら結婚することになっていた。そして、今年の春には弁護士の彼と結婚だ。
ゆりには麻衣の気持ちは分からないだろうな。ゆりは、限りなく1回に近いし、相手も優しい弁護士だし…。
麻衣は虚しい気持ちになった。
周りからの評価も、老化も、そんなのどうでも良くなった。35歳にして、気にすべきところは「回数」だったのだ。
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