愛を食む

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ここが私の戦場なんだ。ここで生きて、ここで死ぬ。 季節に関係なく心は寒々としている。違いといえば、そうだな、星が綺麗に見えるかどうか程度のもの。  こんなところで何をしてるのかと聞かれたら「待っているのよ」と答えるでしょう。  それしかできないのよ。私には何にも力がない。  この扉を開ける知恵も知識もない。彼らが手に入れた力は、私には手に入らないものだった。  外を見ているしかできない小さな存在よ。かつては愛してもらっていた。私と彼らではきっとすべてが違う。時間も景色も世界も。  そういえば、生き物なのだから、何かを食べないと生きていられないというのは同じね。  私はこの部屋のものを食べて、何とか生きていられるけど、彼はちゃんと食べているのかしら。この食べ物は彼のおかげね、彼がよく座っていたところにそっと置かれていた。  大量の食料だった。この時から、もう彼は私との別れを決めていたのかもしれない。  ああ、彼が愛おしい。ないてみるけれど、彼の声はしない。もう手を伸ばしてくれることもない。
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