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「ねえ!このドリンクめちゃかわいい!」
放課後、ネットで話題になっているカフェに来ると、実雪がはしゃいだように声をあげた。
「ほんとだ〜!ねえねえ写真撮ろうよ。有沙の位置から撮ってくれない?高い位置でよろしく!あと盛れるアプリでよろしくね」
「任せて」
私は、自分のスマートフォンの中にいくつか入れたカメラアプリの中から1つを選び、起動させる。
たちまち、手に持ったドリンクの液体の色は鮮やかになる。そして、私たちの肌の色は白くなり、髪には艶が出て、目が大きくなる。
「はい、ちーず」
笑顔でカメラに笑いかける。
「よし、見せて」
写真を何枚か撮ると、私のスマホを取って、晴夏が写真チェックを始める。
「いい感じじゃん。写真送っておいて!ストーリーにあげるわ」
横から写真を覗き込んだ実雪が、笑顔で言った。
写真を撮ることが、最近増えたと思う。
それとも女子大生とは写真を撮り、こぞってSNSにあげる生き物なのだろうか。
タピオカを飲んだ。パンケーキを食べた。おしゃれなカフェに行った。写真に映えるスポットや食べ物を選び、こぞってそれをSNSにあげる。
そこは、人とマウントを取り合うような、順位を争うような場所で、写真をあげることで自分がいかに充実している生活を送れてるか、自分がどれだけ友達と楽しく過ごせているかを誇示することに皆が皆、全力を注いでいるようだった。
帰り道、先程撮影した写真をアップすると、写真を高評価する通知が沢山飛んできた。
「かわいい!」
「これどこのカフェ?ちょーおしゃれだね」
コメントが来るたび、私は笑顔になる。
自己肯定感が高まり、自分はかわいく、キラキラした生活を送っていると思えた。
私は、自分のあげた写真を見た。さっき飲んだドリンクはこんな色ではなかったと思ったが、もうどんな色だったか思い出せなかった。
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