揺れる

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田中は友達が少ない俺の数少ない話相手だ。 このクラスでは、ご覧の通りクラスの中心人物がお猿さんなので、下ネタに乗れない男子は孤立する。 俺と田中は、自尊心と羞恥心から自慰行為の頻度やアレの長さといったこのクラスにおける通過儀礼的質問に答えられなかった。 結果、「風紀委員」「ムッツリ」と言ったあだ名をつけられ、教室の隅に追いやられたのである。 「さあね。全くわからない。」 「結局顔ってことか、馬鹿馬鹿しい。」 田中は大きくため息をつく。 「僕らみたいなのがどんなに頑張って女子に優しくしても、ああいう顔だけで中身ペラペラなやつにかっさらわれるんだよ、きっと。」 「顔ね〜。」 俺は目の前にいる田中の顔と、教室の真ん中で喚いてるお猿さんの顔を見比べた。 正直言って、田中の方がお猿さんよりも顔も良ければ身長も高い。 彼は良く自分がモテない原因を顔のせいにしているが、その理屈もあまり良くわからない。
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