両手に花?

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両手に花?

「ぱぴこ、ここ広いから寝ていい?」  ボックスタイプの後部座席は広々としている。 「構わないよ」 「つまらない子ね」私は呆れた。 「だって、朝早いんだもん」  かんなは6時半に起こされご機嫌斜め。  私は助手席に座った。  かんなはスイッチを取り出して寝そべりながらやっている。 「出発するよ」  私はシートベルトをした。  車は、ゆっくりと動きだした。 「休憩取ろうか?」  いつの間にか私まで寝ていたようだ。敦に言われてハッとした。  かんなはまだ、寝ている。 「かんなちゃん、起きるかな」  私は、ちょっと大きめの声で「かんな!」と言った。起きる様子はない。 「トイレ休憩して、朝ごはんは何か買おうか?」 「そうね」と私はいい、扉を閉めた。  ピピピッと音がして車の鍵が閉まった。  トイレ休憩してから、売店へ。  おにぎりに焼きそば、コーヒーなどが売っている。 「焼きそば好きだったよね?」  私もかんなも好きだ。  焼きそば3つにおにぎり2つ。  私は目覚ましのコーヒーが欲しいと言った。かんなと敦はペットボトルのお茶だった。かんなは水と緑茶とカルピス以外は飲めない。敦は甘いものが嫌いだっけ。  紙コップを受け取るとコーヒーメーカーに入れる。ブレンドMというボタンを押す。ドリップされたコーヒーがツーと落ちてくる。 「蓋して。早く行くよ」  敦はよっぽどかんなを心配しているのかソワソワしている。  はいはい。と心の中で言って蓋をするといそいそと売店を後にした。  帰ってくるとかんなが起きていた。 「私もトイレ行くぅ」 「行きたいの?」 「まみこ、カモンヌ」  仕方ない。迷子になられたら困るので一緒にトイレまで行ってあげた。 「まみこ、お腹すいた」 「焼きそば買ってあるわよ」 「やったね」  急いで車へ戻った。 「ぱぴこ、ただいま」 「お帰り」 「焼きそば頂戴」  かんなは左手を差し出す。  敦は不思議そうに焼きそばを渡す。 「まみこから聞いたんだ」  察しの良いかんなは答えた。 「そうか」  敦はうんうんと頷いている。  私は、コーヒーを飲んだ。にがっ!  敦は私の顔を見て笑った。 「ブラックにしたの?」  あ、砂糖とミルク入れてなかった。 「目覚めのコーヒーはブラックにしてるの」  無理してコーヒーを飲んだ。やっぱり苦い。 「目覚めた?」 「ええ」  冷めたら一気に飲んでやる! 「出発だ」  車はサービスエリアを出た。  中華街へ向かっている途中だった。見慣れたシルバーのZがいた。 「まみこ、あれって…」  かんなも気付いたようでシルバーのZを見ていた。敦は運転に集中してるのか微動だにしなかった。  左ハンドル。やはりそうだ。  Zは、誰かを乗せていた。女性?  助手席に座っているのは50代の綺麗目な女性だった。  Zは、追い越し車線を颯爽と走って行った。  綺麗な人選んだわよね。やっぱ、見た目なんだわ。  でも、これで落ち着いて恋愛出来る。安心した。 「高いけど仕方ないな」  安い駐車場は、ないらしい。埼玉とは大いに違う。  駐車場に車を止めると私たちは降りた。 「さあ、歩こう」  中華街は見えない。 「パンダのぬいぐるみ欲しい」 「私は中華菓子」 「俺は、餃子かな」  敦の腕にしがみついた。かんなは右に敦と並ぶように歩く。  5分くらいして中華街が見えてきた。    
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