56人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
両手に花?
「ぱぴこ、ここ広いから寝ていい?」
ボックスタイプの後部座席は広々としている。
「構わないよ」
「つまらない子ね」私は呆れた。
「だって、朝早いんだもん」
かんなは6時半に起こされご機嫌斜め。
私は助手席に座った。
かんなはスイッチを取り出して寝そべりながらやっている。
「出発するよ」
私はシートベルトをした。
車は、ゆっくりと動きだした。
「休憩取ろうか?」
いつの間にか私まで寝ていたようだ。敦に言われてハッとした。
かんなはまだ、寝ている。
「かんなちゃん、起きるかな」
私は、ちょっと大きめの声で「かんな!」と言った。起きる様子はない。
「トイレ休憩して、朝ごはんは何か買おうか?」
「そうね」と私はいい、扉を閉めた。
ピピピッと音がして車の鍵が閉まった。
トイレ休憩してから、売店へ。
おにぎりに焼きそば、コーヒーなどが売っている。
「焼きそば好きだったよね?」
私もかんなも好きだ。
焼きそば3つにおにぎり2つ。
私は目覚ましのコーヒーが欲しいと言った。かんなと敦はペットボトルのお茶だった。かんなは水と緑茶とカルピス以外は飲めない。敦は甘いものが嫌いだっけ。
紙コップを受け取るとコーヒーメーカーに入れる。ブレンドMというボタンを押す。ドリップされたコーヒーがツーと落ちてくる。
「蓋して。早く行くよ」
敦はよっぽどかんなを心配しているのかソワソワしている。
はいはい。と心の中で言って蓋をするといそいそと売店を後にした。
帰ってくるとかんなが起きていた。
「私もトイレ行くぅ」
「行きたいの?」
「まみこ、カモンヌ」
仕方ない。迷子になられたら困るので一緒にトイレまで行ってあげた。
「まみこ、お腹すいた」
「焼きそば買ってあるわよ」
「やったね」
急いで車へ戻った。
「ぱぴこ、ただいま」
「お帰り」
「焼きそば頂戴」
かんなは左手を差し出す。
敦は不思議そうに焼きそばを渡す。
「まみこから聞いたんだ」
察しの良いかんなは答えた。
「そうか」
敦はうんうんと頷いている。
私は、コーヒーを飲んだ。にがっ!
敦は私の顔を見て笑った。
「ブラックにしたの?」
あ、砂糖とミルク入れてなかった。
「目覚めのコーヒーはブラックにしてるの」
無理してコーヒーを飲んだ。やっぱり苦い。
「目覚めた?」
「ええ」
冷めたら一気に飲んでやる!
「出発だ」
車はサービスエリアを出た。
中華街へ向かっている途中だった。見慣れたシルバーのZがいた。
「まみこ、あれって…」
かんなも気付いたようでシルバーのZを見ていた。敦は運転に集中してるのか微動だにしなかった。
左ハンドル。やはりそうだ。
Zは、誰かを乗せていた。女性?
助手席に座っているのは50代の綺麗目な女性だった。
Zは、追い越し車線を颯爽と走って行った。
綺麗な人選んだわよね。やっぱ、見た目なんだわ。
でも、これで落ち着いて恋愛出来る。安心した。
「高いけど仕方ないな」
安い駐車場は、ないらしい。埼玉とは大いに違う。
駐車場に車を止めると私たちは降りた。
「さあ、歩こう」
中華街は見えない。
「パンダのぬいぐるみ欲しい」
「私は中華菓子」
「俺は、餃子かな」
敦の腕にしがみついた。かんなは右に敦と並ぶように歩く。
5分くらいして中華街が見えてきた。
最初のコメントを投稿しよう!