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輪廻転生
「どういうことなんだ」俺は自分の部屋のベッドに飛び込んで枕に顔を埋めた。
俺は綾瀬秀則なのか?
いや、一条直也、それが俺の名前のはず。
幼い頃からの記憶もある。俺は今の両親の子供として生まれて、この家で成長し、高校生になった。両親との思い出も鮮明に覚えている。そして高校で美穂と出会い、彼女の事を好きになり交際を始めた。彼女とのキスの感覚もこの唇に残っている。間違いなく俺は一条直也なのだ。
しかし、それとは別に綾瀬秀則としての42年間も覚えているのである。
大学を卒業しそのまま経済学の研究者として残り同じ学科を専攻していた同い年の真理子と交際を初め、そして結婚をして一人娘の美穂が生まれた。彼女はまるで天使の様で俺のかけ換えのない宝物であった。二人の為に俺は精一杯働いた。彼女達を幸せにする。それが俺の生き甲斐であった。毎日が幸せな日々であった。
しかし、当然起きたあの日の事故……、この記憶……、どういうことなのか?
「輪廻転生・・・・・・というやつなのか・・・・・・」
俺の口から自然とその言葉が飛び出してくる。
人が死んで、また違う生き物に生まれ変わるというやつだ。そういえば、以前なにかの本で読んだような気がする。普通は生まれ変わりというのは死後に別の人や生き物に生まれ変わるものであるのだが、人によっては生まれ変わって時空を何千年も遡る場合があるそうだ。
そういう者達は未来の出来事が手に取るように判り預言者と呼ばれ崇められたそうだ。
ただ、俺の場合は、中途半端に俺の生きていた時代とはズレている為に、予言など出来ないが……。
「……ということは俺と美穂は……」
彼女と俺は肉体的には他人であるが、精神的には親子ということになるのか?俺は自分の娘にときめいて、キスをしたり軽く抱き合ったりしていたのか……。あわよくば肉体関係までも持とうと考えていた。もう少しで一線を越えてしまいそうだったと思うと、軽い懺悔の気持ちがフツフツと沸き上がってきた。
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