先生と私(と、ときどき兄)

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 大学四年の秋だった。  私は心底困っていた。  どうしても取得できない単位があるのだ。一年の時から春夏秋冬休むことなく出席しているのにどうしても単位をとることができない。  いつも必ず寝てしまうのだ。  講義がつまらないのだから仕方がない、と言い切るのは簡単だが、他のみんなは難なく単位を取得している。ただ、講義中に起きてさえいればいいのだ。起きて先生の言う冷え冷えとしたギャグの一つでも覚えて、試験の際の答案用紙にそれを書けばいいのだ。  だけど、それが私には難しい。 「だからノート貸すって」  呆れた友人たちはそう言って講義ノートを貸そうとしてくれるけれど、私は断固拒否をする。 「ダメ! これは私と先生の戦いなんだから」
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