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死神には神から与えられるミッションを1000こなすと、人に転生できるというものがあった。
「死神、1000回目の最後のミッションだ。乳ガンの女を死に導け。期間は1週間だ」
死神は最後の任務を終えるために女性のところに向かった。
乳がんの女には4歳の娘がいた。
女はその娘のために死にたくない、生かせて欲しいと死神に懇願した。
死神は迷った。
(生かせるか、逝かせるか)
なぜなら前に人だった時に死神にも幼い娘がいたのだ。
(俺も幼い娘を残して、先に逝ってしまった。)
女の懇願に、死神は幼い自分の娘のことを思い出していた。
死神になる前、彼が人だった時、彼には愛する妻と幼い娘がいた。彼も妻もその時、流行したはやり病にかかてしまった。
妻が亡くなり、その後自分もこの病気のため死んでしまった。
最後、病床で彼の手を握りしめ、目からポタポタと涙を流す娘。『お父さん、私を一人にしないで』と叫んでいた娘のことをを思い出すと、今の死神の心臓に槍が突き刺さったかのように痛んだ。
(そういえば私の娘は7つだったか……)
4歳の女の娘を見ると、自分の娘が思いだせれた。女の言葉は死神の意思を迷わせた。
死神は、神から与えられた、人の寿命をコントロールする能力を使い、彼女の寿命を30年延ばしてしまった。
死神は神のミッションに失敗してしまった。
「君は規律を破ったね」
「はい」
神の言葉に死神はひざまずき、こうべを垂れた。規律を破った死神はどうなるのか。
(999のミッションまで頑張ったんだがな。ああ転生したら、妻や娘の生まれ変わりに会えたかもしれないのに……。)
と最後のミッションの失敗をもったいなく思ったが、後悔はしてなかった。
規律を破った者は無限回廊をさまよい、2度と転生できない。
だが死神は、娘も妻もこんな父を誇らしげに思ってくれるだろうと考えた。
そんな死神に対し、神は思ってもみない言葉を発した。
「おめでとう。合格だよ」
「え!」
「実は転生できる条件は2つあるのだ。1000のミッションクリアをするか、規律を越えて愛を優先できるかであるのだ。
さあ、輪廻の輪に入り転生するがよい」
死神は転生を許された。神が指示する通り、転生の輪廻の輪の光に急に包まれ、死神は消えていった。
神は死神であった男が輪廻の輪に戻っていったのを見ながらつぶやいた。
「私のミッションもひとつ終わった。彼を管理して輪廻の輪に戻すこと。そして死んだらまた死神のミッションを彼に与えて管理すること。人を神に従わせるために、このミッションを私は続けなきゃいけない。これが神に課せられたミッションなんだから」
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