近所の猫 2020/2/29

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近所の猫 2020/2/29

 最近の日課は、一か月ほど前にまとめ買いしたマンガを読み進めることです。夜寝る前、自分の部屋のベッドの中で横になりながら、眠さで瞼が重たくなるまで時間を決めずに読んでいます。家族がみんな寝静まった後で私だけが起きている場合が多く、真夜中だと外の騒音も無いので、ゆったりとマンガの世界に浸ることが出来る、少し贅沢な時間です。マンガの中ではマフィアの抗争や薬物の取引なんかが行われているので、世界観がゆったりしているわけでは無いのですが……。一人で趣味に没頭できる時間は心の充電になりますよね。このマンガの感想も、いつか書いてみたいと思います。  そんな日課の時間に、ここ最近、ちょっとドキッとする出来事が続いています。真夜中にも関わらず、外から野良猫の鳴き声が聞こえてくるようになりました。  最初にそれを聞いたのは、一週間ほど前でした。ベッドでごろごろしながらマンガのページを捲っているしている私の耳に、マンションの外からなのか中からなのか、突然女の人の声が聞こえてきました。私の部屋の窓がちょうど外の駐車場に面しているので、昼間に車の音や人の足音などが聞こえてくることはありましたが、夜遅い時間に女性の声が聞こえてきたことはあまりありませんでした。上の階に住んでいる人がギターを練習しているときの音が聞こえることはあるので、もしかして近い部屋に住んでいる誰かの話し声かなとも思ったのですが、耳をすましても言葉が成り立っているようには聞こえず、むしろ「うあー」とか「うんにゃー」などと言ってる風でした。  夜中にどこからともなく意味不明の言葉(というより唸り)が聞こえてくる怖さに、その日の私はゆったりマンガを読めるような心境ではなくなってしまい、その奇妙な喃語に集中力を奪われてしまいました。そして後日、その声はまた聞こえてきました。今度は朝の七時頃、私が家族とリビングにいる時です。  夜に一人で聞くと怪しさ満点だったのですが、朝に家族といる時に聞くと不思議と怖さは感じませんでした。しかも、前に聞いた声と似たようなトーンにも関わらず、より言葉になっていないような不明瞭さがありました。私の部屋とリビングは、間取りの中でも正反対に位置しています。場所が大きく変わっても声量が変わらない、ということは、近くの部屋に住んでいる人物が声を張り上げているではなさそうで、なおかつ声は部屋の外の、しかも下側から聞こえてくる。母もそれに気が付いて、二人で窓から地上を見下ろしてみると、そこには、深く積もった雪の上に連なる点状の足跡がありました。  直接姿を確認することは出来なかったのですが、昔からマンションの近所には野良猫が多く住み着いています。「うあー」とか「うんにゃー」とかの声の主は、この辺りをふらっと訪れた野良猫のもので間違いなさそうです。ですが、この雪深い季節に、猫たちはどうやって食べ物を集め、どこで寝床をつくっているのでしょうか。あの唸り声は猫のどんな気持ちの表れなのか、寒さを凌いでしっかり生活出来ているのかどうか、何だか少し気がかりです。暖かい季節になったとき、もし彼らの姿を見られれば安心できるのですが……。    今日も夜が遅くなりました。猫の声が聞こえることをちょっぴり期待しつつ、マンガの続きを開きたいと思います。  次の更新もよろしければお付き合いください。ありがとうございました。
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