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学年二位だって、別に努力したわけじゃない。ただ授業を聴いて、出された宿題をこなしてきただけだ。
中学の頃、ぼくはこの学習能力を天性のものだと周囲に自慢したこともあったが、そんなものにはなんの意味もなかった。
以降、そういう傲慢さは捨てた。
当然、それを捨てたところで学力が変化するはずはなく、相変わらず二位は取り続けた。
二位であることに誇りはないが、だからといって、二位の座を誰かに譲りたいとは思えなくなっていた。
この気持ちが芽生えてきた頃、ぼくは気付いた。
『ぼくは一位になろうとはしていない』と。
向上心は欠片もなく、ただただ授業を受けているだけ。そんな人間には二位くらいがお似合いだ。
一位のように褒め称えられることもなく、一位の眼中に入ることもなく、影に埋もれる二位であり続ければそれでいい。
そんな悟りの境地に至り、高校二年生の二位生活を送り続けた。
そしてこれからも送り続けるつもりだ。
だがそんな感情も、数分後には、即座に消滅させられていた。
夕方、いつも通り学級主任の話があり、それを聴き終わり次第下校する。
ぼくの学級主任の話し方は非常に効率的だ。
まず最初に幾つの話をするかを述べてから話し始める。
そして、それぞれの話のタイトルを黒板に記し、タイトルを指差しながらその話をする。
今日の話はどうやら二つらしい。
黒板に学級主任がタイトルを綴り始め、一つ目の話が『不審者注意』と分かった。そして二つ目の話のタイトルを見た瞬間、その場にいた生徒全員の顔色が変わった。
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