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 再捜査のきっかけは偶然だった。継続捜査班では定期的に過去の未解決事件の再評価を行っている。そのとき、この事件の資料を読んでいた古河愛子が言ったのだ。《これは指名手配の写真が悪い》のだと。  事件関係者の証言は、宗太自身が言うように、山口宗太という人間に対してほとんど印象に残っていないらしい、実に曖昧なものだった。  そこで愛子は言ったのだ。写真では印象に残らないと。現に、実物を見た人でさえ、ほぼ全くと言っていいほど印象に残っていないじゃないかと。  愛子には、《事件を描く》不思議な才能があるのだった。仁美は、愛子と組んでもう二年になるが、未だにその才能を合理的に説明することが出来ない。大げさでなく《特殊能力》に近いが、愛子がその才能によって、いくつも迷宮入り事件を解決に導く姿を目の当たりにしてきたのだった。 「写真と似顔絵では、見る人の印象も違うから。それで、手配ポスターを顔写真から似顔絵に変えたのよ」  仁美の説明を聞き、宗太は「なるほど」と頷いたが、すぐに今度は怪訝な表情を浮かべた。
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