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2.交代
「まずはもう一度握って下さい。そう、もっと強くです」
彼はむしろ今までよりも優しげな声で言って来た。ためらいつつも再びふれると最高潮に固くなる。凶悪に立ち上がったそのヘビに、ミラは両頬を引きつらせた。
「も、もう十分な気がしますけど……」
だが神官は楽しげにとまどうミラを指導した。
「いえいえ、ちゃんと根元を握って。でないと満足できませんよ」
「こ──こうですか?」
何とか幹を握ってみたが太すぎて指が回らない。ふれた手のひらにくっつくようなおかしな皮膚の感触だ。力を入れてしごき上げると、それがまたぐんと太さを増した。手を離したいのはやまやまだが、とにかくやることをやってからでないとこれからの仕事にさしつかえる。先払いで報酬をもらった以上、今さらもう後には引けない。
「……ふ」
彼が小さく吐息を漏らし、どこか苦しげな顔をした。痛いのかなと思ったが、ミラの動きはとどめないからどうもそうではないらしい。
寝台に四肢を捕らわれて、息を殺して耐えている彼は壮絶なくらい色っぽかった。ぱっと見、聖なる神官がサキュバスの誘惑に耐える図だが、これは相手が望んだことでミラの意志とは関係ない。そう思われたら心外だ。
うめくように神官は続けた。
「う……なかなかいい、です、が。でも、このままだと……いいんですか? 私が昔読んだ書物では、たしかサキュバスが自分の中で受け止めなくていけないと……」
まるでさそうような声の響きにミラは思わずうなずいた。
「はい! では、ちょっと待ってください。まずは」
彼から離れ、気合を入れる。ここからがいよいよ本番だ。
ミラは自分の髪にふれると、おさげ髪の三つあみをほどいた。背中に届く黒髪が今までくせでゆるく波うつ。それを見ていた神官がまばたきをくり返して言った。
「一体何をしてるんです?」
「私の『髪』が重要なんです。それではちょっと失礼して」
彼のまなざしを気にしつつ、ミラは両手で胸をつかむと下着の上からもみ込んだ。先ほどからなんとなく体が熱いような気がする。
神官は目を丸くした。
「今度は何してるんですか」
「本に書いてある通りです。自分の胸を愛撫して、自ら快楽に溺れると……。私があなたの中の力をサキュバスの秘術で取り込むと、私の体で力が変化し、髪に変わってのびるのです。昔はそれがサキュバスの魔力のもとと考えられ、大変高価な薬になったと本には伝えられています」
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