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恋洩れ火-こもれび-
世界に亀裂をつくりたいと願って
命の火を燃やすがの如く懸命に無様に
滂沱の涙を流しながら叫んだ想いは
いつしか空谷の彼方へと消え去り
私に残ったのは寂寥感だけ
抗った過去は恥辱に晒されるのを恐れ
陽の目をみないまま小さな箱に捨てられた
取り出せないと分かっていながら
意にそぐわない変化を嫌ったはずなのに
時計の針を弄ぶがの如く辛辣に嘲笑い
気づけば時間の外側にいるような錯覚
いつしか私が私を忘れそうで
けれども踏み出せない醜い足
抗いと諦めの違いを認識できぬ
自分を正当化したまま小さな箱に閉じこもる
抜け出せないと分かっていながら
時折夢で見る 煌びやかに咲いた一輪の花
紅色の花弁 黄金色に漂う花粉
その佇まいは業火にも似て
一雫 凛 と奏でた花弁の涙
あの日の恋か
明日の恋か
私の心にはいつでも
小さな箱を燃やす為の
篝火が燻っているのだろう
いつかの恋から洩れた火か
明日へと続く恋の火か
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