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「……まぁ、いいか」
独り言をこぼしながら、彼は撮影ブースの中に入る。
それもそうだ。
自転車でしばらく走ってようやく見つけたモノだ。
あまりにも毒々しい見た目をしているのは事実だが、これを逃して一般的な機械をまた探すとなればいつ見つかるかわかったものではない。
運が悪ければ自分の走って行く方向にはひとつもないかもしれないわけだ。
なによりも、せっかくの休みの日である。そんなに無茶なことはしたくないのが本音だった。
中に入ると早速代金の催促である。
青年は、へいへい、と苦笑いしながら所定の金額を突っ込む。
正面のモニタがミラーモードに切り替わる。
自転車で走ってきたせいで、少し長くなり始めた前髪が完全にオールバックのようになってしまっていた。
櫛の類いでも持ってくればよかった、と若干後悔しながら、彼は手櫛でなんとか自分のセッティングを終えた。
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