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声
「お邪魔しました」
本当は『お世話になりました』という所を、わざとこういう言い方をするのが子供っぽい俺。
三毛猫の『ネコ』を抱いて怜さんが猫の手でバイバイをしている。
どこまでも食えない男だ。
遥斗さんはこんな男のどこがいいんだろう。
「駅まで送らなくて大丈夫?何かあったら連絡してね。落ち着いたら遊びにきてね」
遥斗さんは優しく言ってくれるが、連絡先も交換していないのにどうやって連絡するのか教えてほしい。
ネコの喉を指でごろごろしてからもう一度頭を下げて家を後にした。
最寄りの駅までけっこう距離があるが、一秒でもあの家から遠ざかりたくて走るように駅に向かった。
新幹線が停まる駅で母親と待ち合わせてその足で不動産めぐりをして部屋を探す。
「なによ、センセイには会えないの?せっかく来たのに」
「…進学やめてニートしようか」
「親に向かってなんてこと言うの!!」
勝手にブチギレている女に手を焼きながらなんとか部屋を見つけて契約した。
母は必要書類と印鑑は忘れてこなかった。
あとは生活するのに必要な家電なども揃えなければいけない。
ヒステリックで言っていることが意味不明な母親と行動を共にするのは体力が必要だった。
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