ソウルメイト

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財布や免許、スマホが入っていたカバンを盗まれた。 都会は怖い。なんて思いながら駅でうずくまっていると自分の前に気配を感じた。 「どうしたの?」 髪が長くて後ろで軽く結んで、女性より綺麗な遥斗さんに声をかけられる。 「荷物、盗まれて」 大学試験に合格して春から住む部屋を探しに上京した。 いつ盗まれたかぜんぜんわからない。 「お金とか、あるの?」 「カバンごと盗られて、何も持っていません」 遥斗さんは少し考えていた。 「じゃあ、しばらくウチに来る?」 その間に免許など再発行してもらいなと助言された。 「ありがとうございます。助かります。でもホントにいいんですか?」 正体もわからない人間に親切するのがわからない。 「ウチの人がOKくれるかわかんないけど、とりあえずおいでよ」 何も持っていない不安に耐えられなくて俺は彼についていった。 連れていかれたのは今どきめずらしい純和風な家だった。 足がすくんで動けない俺を不思議そうに見つめる。 「文豪かぶれでこういう家に住んでるの」 中の住人は小説家らしく、遥斗さんと一緒に住んでいるようだった。
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