八方塞がり

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八方塞がり

実家に連絡して、カバンが盗まれてたことを伝えて送金をお願いした。 「どこに送ればいいのよ。ていうかどこで何してんの!現金を郵便で送るのはダメなのよ、どうやって受けとるつもり?」 「駅に迎えにきてよ。それで一緒に帰ろ」 「親はあんたの都合のいいパトロンじゃない」 そう言って電話を切られた。 「厳しいご家族だね」 遥斗さんは親と交渉してる横の壁にもたれて、かすかに聞こえてくる向こうからの声を聞いていた。 「迎えに来てくれないってことは俺の事なんかどうでもいいって意味なんじゃないですかね」 俺はやけっぱちに言ってしゃがみこんだ。 「ネットカフェでも行っていくらか金作って帰ります」 「ネカフェは身分証明書いるけど持ってる?」 「…う」 そうだった。金以外にも全部盗まれている。 これじゃ何もできない。 リビングのほうで怜さんの遥斗さんを呼ぶ声がする。 「お茶かな。 一服しますか。あ、名前聞いてなかったね」 「中村 匠です」 そういう事、あまり関心ないのかなと思いながらついていった。 二人にも改めて自己紹介されたことはなく、お互い呼び合っているのを聞いておぼえただけだった。
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