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怜さんは小説家で、この家の一番端の部屋で執筆している。
下の名前しか聞いていなかったので気が付かなかったが、本名は「鈴村怜」。結構有名な作家だった。
放っておくとずっとパソコンの前から離れないし時間感覚もおかしくなるので、ご飯を運んでお風呂の時間も告げに行く。
全てのことを遥斗さんが取り仕切っていた。
「俺は21,怜は33でひとまわり違うの。最近すごく年を気にしてるから年齢の話はタブーね」
一緒にお皿を洗っていた時、不意に遥斗さんが笑って言った。
33歳か。もっと若く見えた。
家にもう一度電話して、俺が「鈴村怜」さんの家に泊まっていることを両親に言ったら手のひら返すように上機嫌になって迎えに行くと言ってきた。
「会えると思ってるんなら思い上がりだ。駅着いたらすぐUターンだっての」
俺は誰もいない、一人の空間で呟いた。
親の内なる正体がかなり俗物なのを初めて知った。
遥斗さんか怜さんに言わなくちゃと思い、ふと考える。
作家は神経質な人が多そうだ。怜さんの執筆部屋には入ってはいけないんじゃないだろうか。
とりあえず遥斗さんがいそうな所を探してみたがいない。
しかし2人で住むにはここは広い。
「文豪かぶれ」、そう言っていた遥斗さんの言葉に意味があるのだろうか。
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