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広い家は怜さんの心の鎧だ。
自分の才能が枯れたのを気付かれないためと、遥斗さんの存在を囲い込むための監獄。
誰か来てもこれだけ広ければ顔を合わせなくてすむ。
日が暮れて真っ暗になっても二人は部屋から出てこなかった。
夕ご飯どうしようと考えていた。料理なんかほとんどしたことないしお金を持っていないからコンビニにも行けない。
せめてご飯くらい炊いておこうかと思ったが、どこに何があるのかもわからない。
遥斗さんがいないとこの家は稼働しない、遥斗さんの城でもあるんだ。
ダイニングテーブルで頬杖をついてそんな事をぼんやり考えていると、ふらりと遥斗さんが現れた。
「ごめんね何にも作ってなくて。コンビニでいい?お弁当でも買ってくるよ」
「遥斗さん顔色悪いですよ。心配だから着いていっていいですか?」
「…ありがと」
近くのコンビニに行く道すがら
「親、迎えに来てくれるそうです。鈴村怜って名前出したら一発でした。会えると本気で思ってるんですかね」
「…え?」
「ここには来ないから大丈夫です。駅ですぐ戻ります」
「そう。寂しくなるね」
コンビニの自動ドアが開く。
「怜も寂しがるよ、きっと」
こんなに信用できない社交辞令はじめてだなと思いながら明るい店内に入った。
「匠くんなら俺たちを救ってくれるかなと思ったんだけど…」
「え?何ですか?」
「なんでもない」
ホントに囁くような声でこんなに近くにいるのに聞き取れなかった。
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