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結局、昨日は何事もなく終わったから、きっと部屋に入ったことはバレていないのだろう。動揺を悟られないようにするのは大変だったが、上手く隠せて良かった。母を怒らせると面倒だし、何よりも怖い。
「なぁ裕二、昨日コンビニで新作のアイス買ってたよな。どうだった?」
「は?」
「しらばっくれんなよ。お前甘いもん苦手とか言って気取ってたけど、やっぱ大好きじゃん!」
「何の話だ?」
休み時間、隣の席の田辺がにやけ顔で話しかけてきた。彼とは友人ではないが社交的な人物だからよく話しかけられる。席替えで隣の席になった時は一部からお気の毒にという視線が投げかけられた。苦手な人はとことん苦手なタイプだ。
「だーかーらー! 昨日、大通りのコンビニにいたよな?」
「いや、昨日はずっと家にいたけど……」
「は? そんなはずないだろ。間違いなくお前だったぞ」
「ほんとだって」
「……マジ?」
「マジだ」
否定し続けていると自信がなくなってきたのか、田辺は腕を組んで「うう~ん」と唸り始めた。
「いやでも……ダボダボのパーカーは確かにらしくないと思ったけど、顔は本当にお前だったし……見間違いにしてはそっくりすぎだし……」
「パーカー? どんなやつだ?」
「どんなって、帽子付きで灰色の……まぁどこにでもありそうな地味なやつだよ」
「趣味じゃないな」
僕は地味な色より赤や黄色といって派手な色を好んで着ている。ダボダボしているのも好きではないし、僕が持っている服の中に灰色はなかったはずだ。
しかし、顔が僕そのものだったのは気になる。世界には自分と同じ顔が三人はいるというが、三つ子でもない限り眉唾ものだと思う。昨日の写真のことを考えると、実は僕には双子の兄弟がいて、両親が離婚した際に父の方に引き取られていった――きっとこれが真相だろう。
「ともかく、僕は昨日コンビニに行ってないからな」
「おう……わかったよ」
強く嗜めると田辺は渋々ながらも口を閉じた。まだ何か言いたそうにしているが、僕は無視してどうやって真相を確かめようか、具体的な行動を考えることにした。
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