三人の僕

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「ただいまー……ってあれ? まだ帰ってないのか。買い物か?」  いつもなら「ゆうくん、おかえり。ご飯にする? お風呂にする? それとも……」なんて言ってくるのに、今日はその気持ち悪い決まり文句がない。  これはチャンスだ。母はノックもせずに部屋に入ってくることもあるから心臓に悪い。手紙を読むなら今しかないだろう。善は急げだと部屋に入り、昨日はすっかり忘れていた父からの手紙に目を通す。 『裕二へ    俺はもう隠すのに疲れた。今から書くことは少なからずショックを受けるかもしれないが、どうか心を強く持ってほしい。  お前の母の部屋には写真が飾られているだろう。入ったことがないなら一度見ておくと良い。実は、その写真に写っているのは……裕二じゃなくて、俺の双子の弟なんだ。八歳ぐらいの時に事故で亡くなってな。  子供の頃の俺達は見た目がそっくりでよく間違えられていたよ。性格は正反対だったがな。妻は……あの女は弟のことが大好きだったんだ。だから見た目が似ている俺と結婚して、双子の赤子に恵まれたわけだが……裕二、お前が俺の弟に生き写しかと思うぐらい似ていたんだよ。  成長して、幼い弟の面影がなくなっていた俺は罵声を浴びせられ、離婚を突きつけられた。裕一は微妙に似てなかったからあっさり引き取れたが、お前は無理だった。あまりにも似すぎていたんだ。  ちなみに弟の名前は裕次郎で、俺は裕一郎なんだが、もしかしてゆうくんって呼ばれてないか?  もしゆうくんではなく本名を呼ばれるようになったら気を付けてくれ。俺もそう呼ばれなくなってから離婚届けを渡されたんだ。お前も何をされるかわからない。  もし家を追い出されたら俺を頼ってくれ。ではな。』
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