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父からの手紙を読み終わり呆然とする。そして、写真の裏を見るとそこには『裕次郎 八歳』と小さく書かれていた。手紙と筆跡が同じだから父が書いたものだろう。
ギィギィギィ
玄関の扉の耳障りな音が聞こえてきた。僕は手紙と写真を枕の下に隠して母を出迎えた。
「ただいま。ごめんね遅くなっちゃった。ちょっとサイズがわかんなくてねぇ」
「……?」
「あ、そうそう。隠す時は肌身離さずが一番よ。ね、裕二」
「え」
「裕二ももういい歳よねぇ……お母さん、まだまだ若いし、ちょっと頑張っちゃおうかな。中学生だけど充分よね? 今度も双子が良いなぁ」
ドラッグストアの名前が印刷されているビニール袋が床に落ちる。中から出てきたゴム製のものはよくわからないけど、嫌な予感が拭えない。
僕は蛇に睨まれた蛙のようにその場を動けなかった。やがて目の前の女は上着を脱ぎ、無造作に投げ捨てた。
僕は手紙をすぐに読まなかったことを後悔しながら嵐が過ぎ去るのを待ち、朝日が昇ってすぐ封筒を持って駆け出した。
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