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普段は埃をかぶったまま思い出の扉を閉じ続ける黄ばんだ表紙を、僕は盛るような勢いで開いた。焦燥感が羞恥に勝ったのだ。
窓側の座席に腰掛ける僕の横を、向かいの新幹線が光の束となって抜けていく。
今ではもうすっかり廃れた習慣だが、僕がまだ幼かった平成のはじめ頃には、自宅の前で節目ごとに家族写真を撮る家庭が多かった。
とりわけ僕の両親は、一人息子だったこともあって、何か事あるごとに僕の姿をフィルムに収めてくれていた。
僕にとって半生そのものとも言えるこのアルバムは、乳児期から幼少期までの写真たちにはめぼしいものはなく、ありふれた少年の成長記録にすぎない。
改めて見てみても、小学校に入るまでは泣いているか、無表情に近いものが多い。
それが明るく笑顔が増えたのは小学2年の冬休み、僕と、隣に少女のような「白いもや」が映っている写真からだ。
もう取り壊してしまった実家の古家の前で、僕とその「もやもや」は肩を寄せ合うように立ち、歯をむき出しにした少年の頃の僕はピースをしている。
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