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「なんか白い、もやもやみたいなもの、ない?」
そんな自分自身の変化よりも僕の目に付いたのは、僕と母の間にある白いもやのような少女のようななにかだった。
明らかに白飛びとは違い、それは白煙のようにその場所を漂っている。幽霊? 心霊写真? いくら小学生でもそれくらいは知っていた。僕は急に怖くなって写真から手を放す。
「この子はね、ぼんやりちゃんだよ。こうくんとお友達になりたくて、つい写真に入ってきちゃったみたいだね」
母はテーブルに落ちた写真を拾い上げて言った。驚きも恐れもしない、いつも通りの安らかな顔である。
「ぼんやりちゃん?」
そんな名前聞いたことがない。しかし僕はそれを母の法螺話だとは思わなかった。
穏やかで誠実な母が嘘をついたことはこれまで一度だってない。
それに幽霊や妖怪の存在だって信じていないわけではなかったから、僕はぼんやりちゃんの話をすんなりと受け入れることができた。
ただ僕にとって重要な問題は、それが怖い存在なのか、ということだ。
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