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「うん。ちょっと恥ずかしがり屋さんだから普段は隠れているのだけれど、こうくんと同じくらい歳の女の子で、この家に住んでいる優しい子だよ。友達がいないから、こうくんと仲良くしたいなって思ってるみたいなの。きっとまた写真を撮ると現れるんじゃないかな」
母の言葉を聞いて、僕はその不可思議な「ぼんやりちゃん」にまた会いたいと思った。
どんな姿でも僕と友達になりたい子がいる。学校でみんなとうまく打ち解けられない僕にとって、そのことが何よりも嬉しかった。
そうして夏が過ぎ、秋が来ると、母の言った通りぼんやりちゃんは写真を撮るたびに映りこむようになった。
ただしそれは家の前か、家の中で撮った写真に限定された。
家族写真だけでなく、家の中の何気ない写真にも現れるので、やがて僕はカメラを持って家中を撮影するようになった。
「ぼんやりちゃん、僕だよ。友達になろうよ」
なんて言いながらシャッターを切った後、フィルムを持って行って現像を待っている時間は幼心に興奮と期待を植え付けた。
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