不透明少女

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現像が終わってぼんやりちゃんが映りこんでいると、僕は彼女と意志の疎通がとれたような気がして、ますます嬉しくなった。 その時撮ったいくつかの写真を見返すと、僕の表情がパラパラ漫画のように次第に笑顔に変わっていく様子が分かる。 「ぼんやりちゃん、今日はどこいたの?」 と母が夕食の時間に尋ねた。僕は喜々として、 「今日はね。押し入れの中にいた」 と答えた。 僕が終始ぼんやりちゃんの話ばかりしているので、いつしかぼんやりちゃんは家族公認の僕の友達になった。 学校でうまく自分の思いを言葉にできない僕は、いるけれど見えないぼんやりちゃんにたくさんの話をした。 それが知らず知らずのうちに友達と話す練習になっていたのかもしれない。
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