不透明少女

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あの写真はそんな日常の中で撮られた。冬休みの平日、母と二人で外食することになった僕は 「ぼんやりちゃんもご飯に連れてってもいい?」 と母に尋ねた。 母は少し悲しそうな顔をして、僕の目線の高さまでしゃがみ、それから一息ついて言った。 「お母さんも一緒に連れて行きたいけれど、ぼんやりちゃんはこのお家から出ることができないの」 「なんで? どうして?」 「お母さんにも分からないわ。今度、ぼんやりちゃんに聞いてきてちょうだいね」 僕が何も言わないでいると、母は立ち上がって言った。 「そうだ。こうくんとぼんやりちゃんのツーショットを撮ってあげるわ。まだ一度も撮ってないものね」 単純だった僕はその言葉にすぐに笑顔を取り戻した。古家の前に立って隣に一人分のスペースを空ける。 「ぼんやりちゃん! おいで」 手招きして僕は微笑む。母のハイチーズの合図で、僕とぼんやりちゃんの初めてのツーショットがフィルムに収められる。 寒空に雪がちらつき始め、ささやかな幸せが小さな僕の胸いっぱいに広がる。
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