不透明少女

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僕はページをめくりながらその時の淡いざわめきを思い返していた。 少年の頃の慕情は恋にも友情にもなる。僕がぼんやりちゃんに抱いていたのは、その頃にしか味わえない少年期特有の感情だったのだろう。 現像されたぼんやりちゃんとのツーショットは僕のお気に入りで、アルバムに入れられてから何度も見返していた。 短い冬が終わり、小学生になって3度目の春が来た。 不安と期待に沸き立つ中で、僕とぼんやりちゃんの別れは予期せぬ形で訪れる。 新しいクラスになった僕に、初めての友達ができたのだ。 雨上がり、淀みに桜の花びらが目立つ始業式の朝、家の前でぼんやりちゃんと撮った写真が最後の一枚になろうとは、その時の僕は思いもしなかった。 少年の心はすぐに感情でいっぱいになる。 僕はしばらくぼんやりちゃんを忘れて、その友達と思いっきり遊びつくした。
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