不透明少女

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これは大学時代に知った話だが、場面緘黙の治療にはまずは一人、親しい友人を作ることが最良らしい。 ぼんやりちゃんに何度も話した甲斐あって、僕はその友達とすぐに打ち解けることができた。 こうして友達が一人できてしまえば、増えていくのにそんなに時間はかからなかった。場面緘黙を克服し、友達いっぱいの僕は、学校が行きたくて仕方のない場所に変わった。 そうして僕の心からぼんやりちゃんがすっかり抜け落ちた頃、家のカメラが故障してデジタルカメラに買い替えられた。 僕と両親はそれでも変わらず家族写真を撮り続けたが、ぼんやりちゃん映ることは二度となかった。
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