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不透明少女
斑雪が夜の車窓に染み出していく。
母が病に倒れたという父からの知らせを聞いて、僕は週末に入った仕事をすべてキャンセルし、実家のある新潟県へと急いでいた。
東京を20時過ぎに出た上越新幹線「とき」の車内は、休日前夜だけあって比較的混雑している。
僕はスマートフォンを座席前のテーブルに置き、こっそりと足元の鞄から一冊の古びたアルバムを取り出した。
30代手前の壮年男が、新幹線で一人、かわいらしいキャラクターが前面に描かれた家族写真用のアルバムを開くのはなんだか面映ゆい。
それでも、僕には早急にこのアルバムをめくらなければならない理由があった。
父曰く、母の容体は安定しておらず、覚悟だけはしておくようにとのことらしい。手遅れになる前に、母に見せなければならない写真がいくつかある。
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