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「お母さん、離婚しよう思うねん」
家族全員が揃い、まず母が口火を切った。
「何でや? 家族一緒に出直そうや」
これまで威張り腐っとった父が三歳児を凌ぐ甘えた声で母にすがる。どっちが歳上でしたっけ? 私はそんなことを考えていた。
母はここぞとばかり父を罵り、父は父で心入れ替えるからとアホみたいなことを吐かしおる。夫婦間の醜態なんぞ十五〜六歳とは言うても子供に見せてええもんちゃうで、私はこの夫婦阿呆やなぁと思いながらその光景を眺めていた。
「あんたらの意見が聞きたいんやけど」
あぁ言うてええんや、これまで私の意見は全て握り潰されてましたけど。
「私意見言うてええんや?」
取り敢えず嫌味を一つ、まぁスルーされましたが。
「あんたはどう思う?」
「したきゃすれば?」
「何でそんな言い方なんや?」
と半ベソ状態の父、今更すがるかあほんだらが。
「えっ?」
と母、何であんたが驚いてんねん? ハッタリかいな?
「夫婦のことは夫婦で決めて、これまでかて私の意見なんか聞いたこと無いんやから好きにしぃな」
「「……」」
いえそこ黙るとこですか?
「ほなあんたはどう思う?」
母は一卵性親子状態のきょうだいにもお伺いを立てる。コイツの返事で全てが決まる……私の勘はそう伝えていた。
「離婚……してほしくない」
終わった……私は我が家の真の崩壊を見た。
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